3
side.樹
がちゃん、と派手な音がした。
断りをいれて電話を切り、部屋に戻った。
「遥……?」
ソファに遥の姿がなかった。
割れたマグカップの破片が見えて、倒れている遥の足が見えて。
あの時と、重なった。
「っ……!」
「いつ、き?」
冷えるようだった。
駆け寄って抱き上げると、遥が驚いたような顔をしていた。
「マグカップ、ごめ……こけちゃって、っ!」
「……驚かすな」
怖かった。
いなくなってしまうかと思った。
いなくなってしまわないように、必死に遥を抱き締めた。
「樹……?痛い、よ」
「………」
「痛いってばー」
俺がどんな気持ちでいるかわかってないようで、遥が背中をぽんぽんと叩いてきた。
「ねぇってばー」
「……俺、は」
「え?」
伝えなくては、
前へ top 次へ