5
side.樹
身体を離して、遥の顔を見た。
―――お前も、泣いてんじゃねえか。
「ごめっ……ごめ、なさ……っ」
「……もういいって、言ってるだろ」
泣きじゃくり始めた遥の涙を拭う。
拭っても拭っても、溢れてきた。
「俺、樹と……っ」
「………」
「別れたく、ないよっ……」
「……ん」
「俺は、自分、がっ……嫌い、だけど
樹は俺を、好きで、いてくれる……っ?」
何当たり前なこと言ってるんだ、こいつは。
「好き」
「っ……」
「好きだ」
「俺、もっ……」
抱き締める。
細い身体を。
脆い心を。
「愛してる」
「……ん、」
伝えても、死ぬほど不安なら。
死ぬまで、伝えてやるから。
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