3
もう少しだけ、
もう少しだけ、俺に勇気があれば。
樹の傍に、いられたのに。
嫌われるのを恐れた。
甘えるのを怖がった。
曝け出すのを躊躇った。
自分の弱さで、樹を傷付けるのが嫌だった。
でも強くなる術を、俺は持っていなかった。
耐えられなくなって、すべてを拒否した。
すべてを拒否して、ぼろぼろになった。
あぁ、好きだったんだなあと。
全てだったんだなぁと。
気付かされるようで。
もう少しだけ、
もう少しだけ、時間があるなら。
もう一度、樹に会いたい。
俺の名前を呼んで、
俺の身体を抱いて、
俺の心を満たして。
「……遥」
優しい声が、聞こえた。
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