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side.樹
ただ俺は、そこに立っているしかなかった。
幸いにも受け入れ先の病院が早く見つかり、遥は搬送された。
付き添った俺は、処置室の外にいて。
遥の冷たい感触だけが、手には残っていた。
早く見つけていればと。
早く気付いてやればと。
何度も後悔した。
もし遥が死んでしまったら―――と嫌な想像だけが頭の中を巡った。
もう一度だけ、もう一度だけでいいから、遥に会いたいと願った。
最悪な終わり方を精算したかった。
寂しがりやな遥を抱き締めて、頭を撫でて、キスをして、抱いて。
もう二度と離さないからと、安心させて。
血にまみれた姿が忘れられない。
動かない身体が怖かった。
(馬鹿だ、俺は……)
わかったつもりでいた。
わかってやれてなかった。
擦り寄る遥に安心しきって、裏の感情に気付いてやれなかった。
「………っ!」
処置室の、ドアが開く。
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