6
 

side.樹



携帯から聞こえる無機質な機械の声。
電源を切っているらしく、一向に遥に繋がらない。
俺は一つ舌打ちして、学校を飛び出した。

気付くのが遅かった自分に叱咤した。
遥に拒否されて、あんな風に傷つけて。
本当の気持ちに、気付いてやれなかった。

まだ、希望をもっていいのか?
嫌いになった訳じゃないのか?

高鳴る期待と、広がる不安。
遥は今一人で、何をしているのだろう。



「……っは、」



遥の住むアパート。
もう外は暗いのに、明かりはついていなかった。

チャイムを鳴らし、返事のないそれに違う男の家にいるのかもと思う。
物音一つしない部屋に、俺は身体を翻した。

どこにいる?
前のように、公園に?

考えて、道路に出たままもう一度遥の家を振り返って、



「っ……!」



急いで家の前まで戻った。
振り返った先、そこには遥の家のベランダがあって。
カーテンが開けっ放しのそこに―――遥の足が見えて。
倒れているようなそれに、さっと血の気がひくのがわかった。



「遥、遥っ!」



ドアを叩いても、返事はない。
合鍵を貰っておけばよかったと、今更ながら後悔した。

ぶち破るには頑丈すぎるドアに、管理人に鍵を、と考えて。
ポストの中に、光るそれを見つけた。

また連絡する、とのメモと一緒に置かれた鍵は、違う男が置いたのだろう。
今は何も考えず、鍵をひったくった。



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