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side.樹
「……君も気付いてるだろ、遥の弱さ」
「………」
「今さら俺は、手を出すつもりはないけど」
手を離して、羽鳥は教室を出ていこうとした。
「遥がまた仕事を、始めたって聞いてね」
「っ……!」
「じゃ」
止めることなく、羽鳥は出ていった。
一人残された俺は、ずるずるとその場に座り込んだ。
また始めたって。
いや、違う。
表面的な理由で、遥がそんなことをするやつじゃないということは、もうわかっているはずだ。
―――寂しい、のか。
一人を恐れて、誰かのぬくもりを感じたくて。
でも、一人を作ったのは遥自身だ。
なら、どうして―――?
『樹の、側にいるの……つらい……』
あの時遥は言った。
何故つらいのか、考えたこともなかった。
俺が嫌いになって、嫌になったのか。
いや、違う。
遥の辛さは俺に対してじゃない。
一人を恐れて。
死にたがりで。
強がりで。
でも誰より優しくて、
「あの、馬鹿っ……!」
迷惑かけたくないとか、何を今さら。
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