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気付いたら行為は終わっていた。
気を飛ばしていたらしい俺は、今まで行為をしていた自室のベッドに寝ていた。
最低限の後処理はされている様子で、枕元に万札が数枚置かれていた。
律儀な男だと思う。
気を飛ばしているなら、金もそこそこに帰ってしまえばいいものを。
「っけほ、」
ひっきりなしに身体を重ねたせいか、誰かから風邪をもらったらしい。
すこぶる体調が悪い。
節々が痛む身体を引きずり、床に落ちているシャツを引っ掛けてリビングに行った。
机に置きっぱなしの携帯が光り、メール着信を知らせた。
期待に胸が高鳴った。
「……羽鳥、先輩」
大丈夫か、と短文の内容。
俺に好意を寄せていた先輩は、俺が樹と付き合い始めてからも優しかった。
いつも気に掛けて、連絡をくれた。
でも先輩に、これ以上迷惑をかけてはいけない。
こんな俺のために、気遣いを寄せてほしくない。
俺はただ、携帯の電源を落とした。
「っう、……ひっく、」
涙が出た。
自分で作った孤独。
後には引けなかった。
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