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side.樹



信じられなかった。
信じたくなかった。

やっと手にいれたのに、遥が、いなくなってしまうなんて。
考えるだけで、身体が冷えるようで。



「嫌だ、」



うわごとのように、何度も繰り返した。
見えない何から遥を取られないように、必死に腕を強く抱き締めた。

弱くて、脆くて、儚い。
遥はそうやって、俺の前から消えていく。



「いや、だっ……」



でも、止められないことはわかっていた。
告げられた時の、頑なな意志の強さを見て取れた目。
もう戻れないと、悟った。



朝がきたら、遥はいなくなるのだろう。

学校に行った事も。
テスト勉強した事も。
飯作った事も。
一緒に過ごした日々も。
初めて、抱いた夜も。

すべて、なくなる。



「遥、っ……はるか、」



名前を呼べど、返事はなかった。

夜が、明ける。



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