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side.樹
「遥、服ここに……」
しゃあ、とシャワーが規則的に流れていた。
声が聞こえなかったのかと返事は期待しなかったが、すりガラスに映ったシルエットがいつもと違って。
「はる、か?」
床に座り込んだようなシルエットが、動かなかった。
「おい、開けるぞ」
断りをいれてドアを開けると、遥の白い背中が見えた。
薄く骨が浮き出ているのはいつものこと。
肌を滑り落ちる水玉が、ぽたりと落ちる。
「遥、っ……大丈夫か、」
自分の服が濡れることも忘れて、風呂場に入り込んだ。
遥の身体を支えて、シャワーを止めた。
口元に手を当て、目を瞑って遥は震えていた。
涙がシャワーかわからない液体が、頬を伝っていた。
「遥、はる、」
「っ……」
真っ青な顔の遥が、背中を支える俺の手を離そうとした。
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