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「あがったよー」
「ん」
樹は相変わらず忙しそうで、書類に目を通しているところだった。
俺はさっきの誓いを思い出しつつ、樹を気遣ってみた。
「ご飯、食べた?お腹すいてない?」
「ん」
「あんま無理しちゃ、駄目だよ」
「わかってるよ」
「ちゃんと寝ないと、」
「……構って欲しいのか?」
ぱっと樹が顔を上げた。
俺は頬が赤くなるのがわかった。
「違っ……俺はただ、」
「悪いな。今はそんな余裕ない」
ふいっ、と顔をそむけられた。
少しだけ、冷たい声。
う、と俺が躊躇っていると、机の横にあるコンビニの袋が目に入った。
さっきまでなかったから、俺が風呂はいってる間に買って来……
(……え?)
袋の中に一つだけ、おにぎりが残っていた。
梅干し入りのやつ。
樹は梅干しが嫌いだ。
だったら自分で、わざわざ買うわけない……。
陸だ、と気付いたときには泣きそうになって、「おやすみ!」と逃げるように寝室に向かった。
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