3
 

ふわり。
樹の匂いがした。



「……いつ、き……?」
「……起きたか」



樹がいた。
ノートパソコンを開いて、画面から目は離さないまま、口を開く。

俺、いつの間にか寝ちゃってたんだ。
ソファに横になって、タオルケットがかけられていた。
樹がかけてくれたんだろう。



「忙しい……?」
「まあな」
「そっか……」
「飯、どうする」
「……今日はいいや」
「わかった」



樹は目を合わせてくれない。
いつもなら甘えるけど、今の雰囲気はそうできそうにもない。

樹は携帯を取り出して、電話をかけはじめた。
肩に挟んで、キーボードを叩き続けている。
ほんと、忙しそう。



「じゃ、俺……先に、風呂はいって寝る、ね」
「ああ。……あ、雨宮。俺」



電話が繋がったみたいだ。

俺は逃げるようにリビングを出た。
着替えとタオルを持ってバスルームに行って、捨てるように服を脱いでシャワーを浴びた。

泣いたら馬鹿だと思った。
別に嫉妬なんかじゃない。
ただ樹は委員として、仕事をしてるだけ。
こんなんでだだこねたら、ガキみたいじゃん。



「………よし」



せめて邪魔にならないように、いい子にしてよう。



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