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飯食おうか、と樹が提案して、俺たちはのそのそと活動し始めた。
そのとき樹はちゃっかりスウェットを着ているのに、俺は全裸だったことに気付いた。
また樹を怒ったのは、言うまでもない。
赤い印はなんだか気恥ずかしかった。
身体を見て、俺が気を飛ばしてる間に綺麗にしてくれたんだなと気付いた。
同時に色々見られたと思うと頭から沸騰しそうで。
「遥?どうした?」
先にキッチンに立つ樹が、黙り込んでいた俺に気付いて言った。
俺は樹から借りたシャツとハーフパンツ(屈辱的なことにぶかぶかだ)を着て、ソファに体育座りした。
「……やっぱりサイズでかかったな」
飲み物を持ってきた樹が、俺を一瞥した。
「樹が背ぇ高すぎんだよ」
「お前が細すぎるんだ」
でも、無理して食わなくていいからな、と樹は付け加えた。
こういう所、優しいと思う。
気遣いっていうか。
前よりは食べられるようになったはず、とか思っていたら、樹がこんがり焼けたトーストを運んできた。
「……そういえば、一昨日の晩から何も食ってないらしいな」
「え……あ、そっか」
一昨日、吐いてしまって。
羽鳥先輩の家でも食事が喉を通らなかったんだ。
なんだかふらふらしたのは、そのせいか。
「……悪い」
「え、何?」
「ろくに飯も食ってないやつに、……あんなことして」
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