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冗談でも、怖かった。
樹がいなくなるかと思った。
もう、誰かを失うのは、嫌だ。
泣きじゃくる俺を抱き締めていた樹が、そっとキスをしてくれた。
啄むようなそれは口だけでなく、額や頬や瞼にも降ってきた。
「ん、っ……いつき、」
「……そんな声出すな」
とまらなくなるだろ、と樹は首元に口付けて、吸った。
「見て、遥」
「え……?う、ゎ、」
顎をひいて俺は自分の身体を見た。
鎖骨のあたりから胸元まで、赤い印がちりばめられている。
首元は見えないけれど、きっと同じような状態になっているはずだ。
「なっ、これ、付けすぎっ……」
「気付いてなかったのか?」
「っ……たりまえだ!」
「消すなよ」
つつ、と樹が印をなぞった。
くすぐったくて身動ぎすると、樹がまた俺を抱き締めてくれた。
「やっと、俺のものになった」
耳元でうれしそうに、樹が言うもんだから。
「……ずっと、だよ」
俺も抱き返した。
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