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「けほっ……げほ、げほっ、」



ある時から、少年は妙な咳をするようになった。
クローゼットの中とは言え、寝るときには耳障りだった。



「五月蠅い」



クローゼットを蹴ると、しん、と咳が止まった。
代わりに、服で口を押さえているように、くぐもった咳が聞こえてきた。
うるさいが、ましになったので良しとする。

時を同じくして、少年はよく気を失うようになった。



「い、ぁっ……」



決まって、犯して少年が達すると、がくんと身体の力が抜けた。



「おい」



頬を叩いて呼んでも、少年は目を覚まさなかった。
そういえば、随分と痩せたような気がする。
食事は一日一食与えていたが、最近は残すことも多くなっていた。

深夜になると、静かにクローゼットを出てトイレに行っているようだった。
最初は勝手に出歩くなと叱ったが、きちんとクローゼットに戻ってくるので、黙認するようになっていた。

夜中に響く水の流れる音と、少年の咳き込む声。
相変わらず、クローゼットの中の奇妙な咳は続いていた。
それでも熱があるかどうかも俺にはわからなかったから、放っておいた。

気を失った少年をベッドから蹴り落とし、乱暴にクローゼットに放り投げた。
それでも次の日には自分で起きて身体を清め、クローゼットの中で健気に待っていた。
静かに、少年の目の火は小さくなっていった。
抵抗を忘れていくように。

それで良い。
そうやって、毎日を過ごした。



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