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犯した罪の、独白をしようと思う。
「上客のあなただからですよ」
路地裏に店を構える違法人身売買を行う店主は、にやりといやらしく笑った。
こつ、こつ、と地下に続く石段に足音が響く。
前を歩く店主の手にあるランプの火がゆらりと揺らいだ。
「コレです」
演技がかった様子で重厚なドアを開けた店主が差した先には、薄暗い部屋が広がっていた。
家具は何もない。
ただ、ぼんやりと心もとない蝋燭の光だけが一つ、灯っていた。
中央の床に横たわっていた、影が動いた。
「ぅ、う」
獣のような、唸りだった。
両手両足を縛られていたのは、まだ少年と呼べる年頃の男だった。
小汚いワイシャツ一枚のその顔には、猿轡が噛まされている。
「……コレが、上玉、と?」
「なに、暴れるもんで、縛りあげているだけですよ。どうです、この顔」
「……生意気そうだな」
立つこともままならない少年の顎を掴んで引きあげると、きっと睨まれた。
痩せてはいるけれど、全体的に色素が薄い。
白くて透き通るような肌、大きな目、長い睫毛、赤い唇。
いかにも、そそられる顔だった。
「いいだろう」
暴れる獣を、手なずけてみるのも悪くない。
店主が欲にまみれた顔で、にやりと笑った。
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