3
 

横抱きにして、慌てて洗面所に連れていった。
ぐったりとしている薫を立たせて、顔を伏せさせる。



「かおる、お願い、吐いて」
「……ん……ゃ、」
「お願いだからっ」



いやいやと頭を振る薫の身体を支えて、右手を口の中に突っ込んだ。
舌を押さえこんで、嘔吐を促す。



「ん、ぅ、ひゃ、ゃぁ」
「かおるっ」
「っえ……げほっ、げほげほっ……」



薫の内蔵が震える感覚がした。
耐えきれなくなったように、薫が突っ伏して吐いた。
背中を摩って、少しでも苦しみが楽になるように願った。



「お願い、かおる、生きて……」



吐かれるのは、胃液とまだ形の残っている錠剤。
ひとしきり吐いて、薫はぐったりとして意識を失った。



「お願い、かおる……」



薫はどこまでも、死のうとする。
俺の想いを置いて、死のうとする。

頬を流れる、涙の感覚があった。
どうか、生きていて。
そう願うことしかできなくて、ただ細い身体を、抱き締めた。



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