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のそりと、ソファから起き上がった。
着替えるのが面倒くさくて、てろっとしたワイシャツ一枚という不格好だ。

裸足でフローリングを歩いて、棚の中を漁る。
物がぼろぼろと床に落ちるけど気にしない。

シートに入ったままの錠剤がいくつか。
名前も忘れた、カタカナの薬たち。
大きいのと、小さいのと、丸いのと、細長いのと。
無感情に、シートからそれらを掌に転がした。



「……みず、」




水を、飲まなきゃいけない。
飲まないと、眠れない。

すべて忘れてしまう、薬たち。
僕を眠らせてくれる、薬たち。

片手に薬を握りしめたまま、不器用にミネラルウォーターをグラスに注いだ。
薬を口の中に転がす。
舌の上で転がるそれらの味は、少しだけ苦い。

少しずつ、少しずつ、水と一緒に嚥下した。
喉が苦しくなっても、少しずつ飲んだ。

またソファに戻って寝転ぶ。
あとはもう、目を覚まさないように待つだけだ。



「……ばいばい」



あ、最後に。
電話でもすれば良かったなぁ、なんて思ったから。

床に放り投げていたスマホを、腕を伸ばして引っ張る。
履歴の一番上にある番号を選んで通話ボタンを押した。

君の声を聴きながら眠れたら、いちばん、しあわせ。



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