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目を閉じていたかったのに、頭ははっきりと覚醒していて、それを許さなかった。
明日なんて来なければ良いと思った。
目を閉じて眠って、もう目が開かなければ良いと思った。

世界は、残酷だ。
当たり前のように毎日が巡って行く。

惰性のように、消費して、疲労して、生きていく。
そこに意味は見いだせていなかった。

何のために頑張って、何のために努力するのか。
何のために生きていくのか、わからなかった。



「…………」




ソファに寝転んで、左腕を高くあげた。
昼間でもカーテンさえ締め切れれば、部屋は薄暗くなる。

外からは、公園で遊ぶ子どもの高い声が聞こえていた。
カーテンに透けた太陽の陽が眩しい。

左腕にぞろりと並ぶ、汚い傷痕。
細かな目盛のようなそれは、けれど等間隔には並んでいない。
右手の指でなぞると、ぽこぽこと浮かんでいた。

醜い腕だ。
生きる事は、醜い。



「……るさい、な……」



外の喧騒が五月蠅い。
車が走る音すら五月蠅い。

すべて、すべて、すべて。
静かになってしまえば良いのに。



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