3
 

「も、や、も、やだ、」
「嫌じゃないだろっ」



ふるふると首を横に振る薫の身体を支えながら、尚も嘔吐を促した。

無意識にか、俺に縋りついてくる腕は、ぞっとするほど細かった。
折れそうなくらい華奢な肩に、骨の浮いた身体。
薫はいつだって、死に向かって生きている。



「ふざけんな、もうしないって、約束しただろ!?」



わかっていた。
薫は平気で嘘をつく。

いちばん好き、ずっと一緒にいたい。
そんな甘い言葉を囁いても、薫はいつだって一人で遠くに行こうとする。



「ふへ」



薫は、泣きそうになっている俺の顔を見て、いつもの笑みを浮かべた。



「いっしょに、いこっかぁ」



いつもそうやって、意地悪なことを言う。
俺がどれだけ頑張ったって、薫は遠くに言ってしまいそうで怖くなる。

平気で俺を置いて行こうとするのだ。
泣いてしまいそうになって、けれど見られたくなくて、薫を抱き締めた。



「ひとりに、すんな……」



そんな情けない俺の言葉でさえ、薫は笑って受け流す。



「うん」



嘘つき。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -