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「も、や、も、やだ、」
「嫌じゃないだろっ」
ふるふると首を横に振る薫の身体を支えながら、尚も嘔吐を促した。
無意識にか、俺に縋りついてくる腕は、ぞっとするほど細かった。
折れそうなくらい華奢な肩に、骨の浮いた身体。
薫はいつだって、死に向かって生きている。
「ふざけんな、もうしないって、約束しただろ!?」
わかっていた。
薫は平気で嘘をつく。
いちばん好き、ずっと一緒にいたい。
そんな甘い言葉を囁いても、薫はいつだって一人で遠くに行こうとする。
「ふへ」
薫は、泣きそうになっている俺の顔を見て、いつもの笑みを浮かべた。
「いっしょに、いこっかぁ」
いつもそうやって、意地悪なことを言う。
俺がどれだけ頑張ったって、薫は遠くに言ってしまいそうで怖くなる。
平気で俺を置いて行こうとするのだ。
泣いてしまいそうになって、けれど見られたくなくて、薫を抱き締めた。
「ひとりに、すんな……」
そんな情けない俺の言葉でさえ、薫は笑って受け流す。
「うん」
嘘つき。
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