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「かおる?」
つー、つー、と繋がっていた電話が切れた音がした。
微かな吐息と、手からスマホが滑り落ちる音を最後に、それは終わった。
「かおる、」
薫は、とても弱いやつだった。
いつもふわふわと笑っていた。
怒ったところなんて見たことはなかった。
表情はないわけではないのに、どこか人形のようだった。
とても弱くて、脆くて、儚い。
すぐに傷ついて、心の中で、泣いて、一つの答えに行きつく。
死にたいという、願望。
「っくそ、」
こういうときの俺の勘はいつでも当たる。
バスを待つのももどかしく、いつの間にか走り出していた。
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