3
「はい、綺麗に吐きましょーね」
トイレの床に座らせて、無理矢理、薫の口に指を突っ込んだ。
容赦はしない。
僕を置いていこうとしたから。
「う、ぇっ……ん、げほっ、げほげほっ!」
喉の奥を震わせて、薫は吐いた。
まだ形の残っている錠剤が、ぞろぞろと吐きだされていく。
「ゃ、いゃ、」
「だーめ。まだ残ってるだろ?」
首を振っていやいやするのは可愛いけれど、手加減はしなかった。
胃のあたりをぐっと押して、嘔吐を促した。
「ぅ、ごめ、なさい、ごめ、なさい……」
すべて吐きだした薫が、ぽろぽろと泣きながら呟いた。
薫は死ぬのに失敗すると、いつもこうやって僕に謝る。
僕はそんな薫に笑って言ってやる。
「ううん、許さない」
一緒に死のうって、言ったのに。
ぼろぼろと泣き続ける薫の細い首に、そっと、手を伸ばした。
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