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「かおる?」
突然電話があったかと思ったら、ごとりと重い音がして、通話が切れた。
意識を失って、手からスマホが滑り落ちたような、それ。
「……また、やっちゃったかぁ」
薫はいつだって自分で死のうとするとき、必ず僕に電話をかける。
わざとやってるのか、それとも。
出るといつも、嬉しそうな声を出すんだ。
嬉しそうに、『ばいばい』って、言う。
今も、多分それだろう。
定期的にやってくる、薫の死にたがり。
いつもふわりと笑っているのに、頭の中では死にたいとばっかり思ってる。
バイトも終わったところだし、ふらりと薫の家に向かった。
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