4
 

疲れか、そのまま智はぐっすりと眠ってしまった。
ベッドの下で煙草を吸いながら、智の目から零れる涙を指先で拭った。
数日ぶりに、ようやく眠りにつけたらしい。



「とも、」



いつまで、こうやって生きていくんだろう。

何も食べず、眠らず、誰かを代わりにして抱かれて、疲れにまかせて眠る。
まるで、死のうとしているようなそれ。



「……ひでぇよ」



同じ顔なのに、何が駄目だったんだろう。
想う気持ちなら、負けているつもりはなかった。

小さな頃からいつも一緒にいた。
それは真も同じだったのに、智は俺じゃなくて真を選んだ。
そして、俺を真の代わりにする。

酷く残酷なことをされているのに、突き放せない自分がいた。
一緒に堕ちていけばいいのか。



「……俺が、いるだろ……」



もうここにはいないやつを想って、泣かないでほしい。
智の頭を撫でて、前髪から現れた額にキスを落とした。

窓から月が見える。
夜は更け、月は沈みかけていた。

夜が明けて、朝が来て、また夜が来る。
一日は巡って、智を置いていく。
一週間前に取り残された智を置いて、毎日は過ぎて行く。

どうか今だけは、月が沈まないようにと、無理なことを願う。
ようやく、眠れたから。
夢の中では、兄貴に会えるかもしれないから。



「……俺も、馬鹿だよな」



酷いことをされている自覚はあるのに、やっぱり智の幸せを願ってしまう。
どうか今だけは、何もかも忘れて、眠っていてほしい。

無防備に少しだけ開いている智の唇に、そっとキスをした。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -