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疲れか、そのまま智はぐっすりと眠ってしまった。
ベッドの下で煙草を吸いながら、智の目から零れる涙を指先で拭った。
数日ぶりに、ようやく眠りにつけたらしい。
「とも、」
いつまで、こうやって生きていくんだろう。
何も食べず、眠らず、誰かを代わりにして抱かれて、疲れにまかせて眠る。
まるで、死のうとしているようなそれ。
「……ひでぇよ」
同じ顔なのに、何が駄目だったんだろう。
想う気持ちなら、負けているつもりはなかった。
小さな頃からいつも一緒にいた。
それは真も同じだったのに、智は俺じゃなくて真を選んだ。
そして、俺を真の代わりにする。
酷く残酷なことをされているのに、突き放せない自分がいた。
一緒に堕ちていけばいいのか。
「……俺が、いるだろ……」
もうここにはいないやつを想って、泣かないでほしい。
智の頭を撫でて、前髪から現れた額にキスを落とした。
窓から月が見える。
夜は更け、月は沈みかけていた。
夜が明けて、朝が来て、また夜が来る。
一日は巡って、智を置いていく。
一週間前に取り残された智を置いて、毎日は過ぎて行く。
どうか今だけは、月が沈まないようにと、無理なことを願う。
ようやく、眠れたから。
夢の中では、兄貴に会えるかもしれないから。
「……俺も、馬鹿だよな」
酷いことをされている自覚はあるのに、やっぱり智の幸せを願ってしまう。
どうか今だけは、何もかも忘れて、眠っていてほしい。
無防備に少しだけ開いている智の唇に、そっとキスをした。
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