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智はそれ以来ショックで部屋に籠ってしまい、もう大学に顔を出さなくなった。
同じ大学に進学して仲の良かった俺は、何度も家に訪れた。
複雑な想いだった。
双子だからかなんなのか、俺と兄貴は趣味が同じだった。
好きなことも、好きな人も、同じだった。
俺は、ずっと智が好きだった。
「……とも、いい加減にしろ」
イラつく。
智の中で兄貴がどれだけ大きな存在だったか、見せつけられるみたいで。
「しばらくちゃんと寝てないだろ。飯も食ってないし」
布団を剥ぎ取って、智を組み敷いた。
顔を涙でぐしゃぐしゃにして、智は驚いた顔をしていた。
一瞬で、その顔が辛そうに歪む。
兄貴と同じ顔をした俺を、見るのが辛いんだろう。
俺は俺だ。
兄貴じゃない。
「真は死んだんだよ」
智の目が、微かに見開かれた。
「真はもう、ここにはいない」
そっと、智の手が俺に伸びてきた。
頬を撫でられて、顔を引き寄せられる。
その目はぼんやりと、遠くを見ていた。
抵抗はできなかった。
その先に起こることは、簡単に予想できていたのに。
「ねむれない」
舌っ足らずな、智の声は甘かった。
「シて」
重ね合わされた唇は、かさついていた。
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