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「……とも、」
相変わらず部屋の鍵は開けっぱなしで、マンションの一室とは言え不用心極まりない。
名前を呼んでもその人物は返事をしないままだったけれど、構わず俺は部屋に入り、きちんと鍵を締めた。
電気は煌々と点いて、部屋は散らかり放題。
智は、ベッドの上で布団にくるまって蹲っていた。
「とも、何か飯食え」
栄養のあるものを作ってやるのが一番だと思うが、俺には料理が出来ない。
コンビニ袋を差し出しながらベッドに乗り上げるけれど、智は布団から出てこなかった。
「いらない」
掠れた声は、泣いた証拠だった。
もう一週間くらいはまともな食事をしていないだろう。
布団の上から肩をひっつかむと、骨を感じてぞっとした。
このまま死んでしまうんじゃないかと思う。
「とも、死にたいの」
多分、答えは合っている。
「死にたい」
一週間前、俺の双子の兄貴が死んだ。
交通事故だった。
智は、兄貴の恋人だった。
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