5
 

「けーい」



虚しい嘘と共に、俺は慧のもとを訪れた。
慧と話すのは楽しかった。

向日葵は、今日も元気に咲いていた。
慧は、あの沿道の向日葵を見たことがあるだろうか。



「慧?」



声はなかった。
一瞬、眠っているのかと思った。

いつも座っている縁に、足を投げ出したまま慧は寝転んでいた。
そっと近付くと、額に汗を浮かべて、目を瞑っていた。



「慧」



返事はなかった。
向日葵が頭の中をよぎる。

なぁ、一緒に坂を降りよう。
あの向日葵を見に行こう。

ぴくり、と慧の眉間が苦しそうに動いた。
俺は手元のビニール袋にぶら下げたミネラルウォーターの存在を思い出した。

未開封のキャップに力を入れて開け、躊躇わずに煽った。
半身になって寝転ぶ慧の肩を掴んで背中を床につけた。



「ぅ、」



苦しそうに、慧が声をあげた。



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