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「夏休み終わるの嫌だなー」
その日も、俺は慧のもとへやってきていた。
今日は俺が持参したアイスを一緒に食べている。
「そうだねぇ」
慧は、曖昧に笑う。
「課題終わったー?」
俺は、もうわかっていた。
慧には課題はない。
「ううん、まだだよ」
慧は平気で嘘をつく。
曖昧な笑顔に気付かないふりをして、俺に話を合わせる。
「夏休み終わったら文化祭の準備か、慧のとこは?」
俺は意地悪だから、そんな話をしてしまう。
一つの祈りをのせて、未来の話をする。
「うん、文化祭あるよ」
未来の話を、いつか訪れる未来の話を、延々と続ける。
虚しさにはっとしても、俺は意地悪だから、学校や進路や将来の話をした。
だから、どうか、曖昧に笑わないでほしい。
「楽しみだなぁ」
虚しい嘘を、慧は延々と吐き続ける。
毎日毎日、向日葵を見た。
黄色い元気な色は、この夏が終わったら、枯れてしまうのだろう。
まだ、向日葵は咲いていた。
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