3
 

外はどれだけ先を見通しても、闇しかなかった。
空にはいっぱいの星が煌めいて、まんまるの月が海原に映っていた。
綺麗だ、と一は思う。
永遠に続けばいいのに、と思う。



「いち、だいすき」



純粋な言葉だった。
それ以上は何もいらないと思った。

二人で逃げよう。
そう言いだしたのは永久だった。

二人を縛りつける何もかもから逃げる算段をしたのも、永久だった。
一は思わず両手をぎゅっと握りしめた。
もう怖くはなかった。
覚えていないのだと、自分に言い聞かせた。

誰かを刺す感覚なんて、覚えていたくはなかった。
自分の身体を引き裂く感覚は、ひどく熱くて仕方がなかった。
あとはもう、覚えていなかった。

永久は最後まで笑っていた。
笑って、一の頬に手を伸ばして、目を閉じた。
それっきりだった。
だから一も追いかけた。

ずっと一緒になりたかった。



「ねぇ、とわ」



もう、帰る家はないのだ。



「僕たちは、間違ってたかな」



ざぶん、と波音が響く。
汽車は終わりを告げることなく、どこまででも続いて行く。



「いち」



永久はただ、そっと一を抱き締めた。
一が思わず固く握りしめた拳を、解すように手で包んだ。



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