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「めんどくせ……」
「何言ってんの生徒会長が」
「おまえは働け」
咎めた副生徒会長の羽鳥裕二は、携帯をいじくりながらソファに寝転がっている。
俺はデスクに座ったまま、とんとん、と書類を整えた。
生徒会室は新年度の始まりということもあって、連日大忙しだった。
今は大分落ち着いてはきたが、春は只でさえ行事が多い。
学年主任に許可貰って、書類作って、経費の計算と………面倒くさいことこの上ない。
「五十嵐、新歓の経費どこまで落とせるか調べといてくれ」
「了解でーす」
会計の五十嵐司が元気良く手をあげた。
2年の五十嵐は見た目こそチャラチャラしているが、仕事はしっかりこなしてくれる。
あと頼むべき仕事は、
「ひな」
「っ、はい」
右斜め前のデスクに座る書記、日向に話し掛けた。
集中していたのか驚いた表情をしている。
「前回の会議内容のまとめ、あるか?」
「あ、データ化できてます。……転送しますね」
「頼む」
普段通りの俺に、見えただろうか。
いつも日向と話すとき、そう考えてしまう。
俺と日向との歪んだ関係と―――忘れ去られた過去は、親友である裕二以外のメンバーには知られていない。
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