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side.日向
あの日以来、会長は僕を避けるようになった。
毎日のように呼び出すこともなくなったし、話すことも少なくなった。
ただ配慮をしているのは伺えて、学校の登下校には羽鳥先輩がついてくれるようになった。
僕を一人にして、また同じ事件が起きないように。
「……会長、これに判子を」
「あぁ」
事務的な会話。
目は合わせられない。
どうしたらいいか、わからない。
僕は、思い出した。
僕は、会長―――瀬川悠が好きだった。
幼かった僕は気付いてなかったけれど、会長も、本当は僕の事を―――。
事故にあって、記憶を無くして、会長に会った。
会長はきっと、僕の事を覚えててくれていたのだろう。
だから覚えていない僕に失望して、あんなことを。
思い出したら、受けとめてくれると思ってた。
また元に戻れると思ってた。
でも、拒否された。
どうしていいのか、わからない。
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