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「なんでもねーよ」
「けちー」



不貞腐れる裕二を無視して、俺はキーボードを叩いた。
一番仲が良いとも言える裕二にも、俺は自分の傷を伝えることができなかったし、伝える気もなかった。
雰囲気が変わったと言われたのは予想外で、けれどわずかに嬉しさを感じる心境を隠すように眉をひそませた。



「おま、顔怖い」
「うるせ」



無視して仕事を続けた。
視界の端で裕二が溜め息をつくのがわかり、黙殺した。

切りのいいところでパソコンから目を離し、ぐん、と伸びをした。
裕二はふざけるような表情を潜めて、ちらりとこちらを見た。
心配をかけていることには罪悪感はなくはない。
小さく溜め息をついて、口を開いた。



「……少し、話をした」
「へぇ?」
「で、何か変わった」
「……よかったな」
「……あぁ」



どういう形でも、どちらに転んでも、平行線をたどり続けていた俺たちの関係が、少しは変わったのだから。
それはそれで、いいのかもしれない。



「にしても、遅いね。購買なんてすぐそこなのに」



裕二が呟いて、なんとなく嫌な予感がした。



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