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すっかり風邪は治った。
俺はいつものように学校にきて、授業を受けて、生徒会長としての仕事をするようになった。
以前と変わらない毎日。
でも少し違うのは、俺と日向との距離だった。
「購買行きますけど、会長何かいりますか?」
「……コーヒー」
「いつものですね」
日向がそう言って、財布片手に生徒会室を出ていった。
明らかに、とはいかないけれど、俺に対する態度や表情が変わったのがわかる。
それは俺の知られたくない傷を知った優越感や、同情のようなものではないことは、俺にはわかっていた。
もっと違う、俺と日向との距離が、縮まったような。
身体を幾度重ねれど、俺は自分を日向に曝け出す真似はしなかったし、日向も自分の意思を強く言いだせない関係にはあった。
あの夜から、確実に何かが変わった気がした。
それが良い方向にいったのか、悪い方向にいったのかは、わからなかったけれど。
「……随分と仲良いね」
「うるさいな」
生徒会室に残った裕二が、口を開いた。
「見てたらわかるよ。雰囲気、柔らかくなった」
「………」
「何かあった?」
裕二は頬杖をつきながら、にやにや笑っていた。
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