5
 

side.日向



初めて聞く、会長の弱々しい声。
不安を掻き消すような、強い腕の力。

近くにいながらも、泣くことさえ隠そうとする。
どうしてそうやって、強がるんだろう。



「怖かったんですか……?」
「っ……!」



抱き締められたまま背中を撫でると、びくりと身動ぎされた。
触れたそこは滑らかでなく、皮膚が歪に突っ張っていて。
会長の不器用さのようで。



「なんとも、思いませんよ」
「………」
「だからそんなに、自分を隠そうとしないでください……」



会長の身体が震えているのがわかった。
小さく、それは本当に小さく、会長は泣いた。
僕はただそれを受けとめて、僕のよりも随分大きい背中を、撫で続けた。



前にもこんなこと、あったような気がすると、思いながら。



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