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side.日向
……会長が、おかしい。
薬を飲んで横にしても、会長は一向に眠ってくれなかった。
目を瞑ってぼんやりと、らしくないことを言ってくる。
……甘えてる、というか。
「……暑い」
「熱ありますしね」
「……何でここに」
「もう帰ります」
「……ここにいろ」
「……頭大丈夫ですか?」
この調子。
熱で頭おかしくなったのか。
でもどうしてか、なんだか、懐かしい。
「……かいちょ」
「……ん……?」
「3年前……僕、どんなでした……?」
今なら聞けそうな気がした。
昔の話をするのは、なんだかタブーになっていたけれど。
「……馬鹿だった」
「え」
「……鈍感、で……」
「……ひど」
「……でも……俺は……」
眠気に負けた会長の、声が掠れた。
微かな声が、漏れる。
思わず立ち上がって、がたんと椅子が鳴った。
空になったコップを持って、台所へ逃げるように行った。
会長はもう、寝息をたてていた。
「なに……」
自分の顔が赤いのがわかった。
そんな突然、わからない。
『好きだった』、なんて言われても。
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