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side.日向



「あんな、こと?」
「本当は……ちゃんと、俺……」



ふと顔を上げられて、目があった。
頬をふわりと触られてどきりとした。
いつもみたいな冷徹な感じではなく、悲しそうな、苦しそうな―――泣きそうな顔をしていた。



「本当は、違う」
「会長……?何、どうし……」
「傍に、いたいだけなんだ……」



ぎゅうと抱き締められて、どうしていいかわからなくなった。
すぐに会長の身体が傾いで、僕は咄嗟に支えた。
眠ってしまったのか、気を失ったのか。

人を呼ばなきゃ、早く部屋に、と思うと同時に、言いも知れぬ感情が込み上げてきた。



初めてではなかった。

会長に対する感情。
会長を怖いとも、すごいとも、冷たいとも、頼りになるとも思っている。
けれどそれらとは違う感情。
温かくて、心地よくて、会長が―――いとおしい。



「かい、ちょう」



僕が記憶を持っていたら、違う関係だったのかもしれない。
もっと仲良くできていたのかもしれない。

僕はあなたにとって、何だった?

懐かしく感じる会長の匂いを一度吸って、携帯を開いた。



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