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殴られると思ったのだろう、日向がびくりとして身体をちぢこませた。
俺は怯えさせないように、そっと、頬を撫でた。



「かい、ちょ……?」
「……何で名前を」
「ごめ、なさっ……呼び捨てに……」
「違う、怒ってるんじゃない。……何で、名前を呼んだ?」



恐る恐る、日向が口を開いた。



「わか、らな、です……ただ、なんか、自然に……」
「そうか」



早く着替えろ、と言って俺は日向から離れた。

思い出したのかと思った。
日向がこうやって、片鱗を憶えている節はよく見る。
でも核心的に、思い出してくれることはない。



(……くそ、)



俺の名前を呼んだ日向の声が、離れなくなった。

同時に日向の怯えた顔も、忘れられなくなった。
手を伸ばしただけで、あんな顔をされるなんて。
とことん嫌われてるな、と自嘲することしかできなかった。



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