2
side.日向
夢を見た。
事故に会った日のこと。
僕はまだ、中学生。
道路を渡ろうとして、誰かが僕を呼んだ。
キョロキョロしたら、後ろから肩をたたかれた。
「ひな」
優しい、声。
柔らかい、顔。
中学生くらいの子。
整った顔立ちと、泣きぼくろ。
僕より背の高い目の前彼が、僕の頭を撫でた。
この手を、僕は知ってる。
あなたは―――。
言い終わる前に、うるさいクラクションの音。
まばゆい光が現れて、僕は目を閉じた。
「っ………、」
「……ひな……?」
僕ははっとして、ベッドで上半身を起こした。
夢の中よりも、もっと低くて落ち着いた声がした。
鋭い目が、こちらを見ていた。
泣きぼくろが、重なった。
「……ゆう?」
「っ………」
着替えていた会長の顔が、強ばった。
何で僕、会長の名前なんて呼んだんだろう。
どんな夢、見てたんだっけ……?
ワイシャツのボタンを留めながら、会長が怖い顔をして僕に近づいてきた。
名前なんて呼んだから、きっと怒ってるんだ……!
「ごめっ……なさ、かいちょ、」
「………」
「っ!」
手を振り上げられた。
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