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side.日向
「遅くなってすみません、お疲れ様でした」
プリンを詰めた鞄を持って、生徒会室を出ようとした。
その瞬間に、くん、と腕を引かれて、視界が反転した。
気付いたときには会長の腕の中にいた。
「か、いちょ……?離して、」
「……ひな」
優しい、どこか懐かしい、声。
僕は会長に呼ばれると、身体が動かなくなる。
「………会長……?」
泣いてる……?
「……悪い」
「………」
ぱっと身体を離して、会長は向こうへ行ってしまった。
なんだかその背中が哀しくて、僕は思わず、会長の制服の裾を引っ張ってしまった。
「……なに」
「……えと、あの」
「押し倒すぞ」
「っ!」
裾を離して、またお疲れ様でした!と叫んで、逃げるように帰った。
なんで自分があんなことしたのか、わからなかった。
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