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side.日向
「もおー本当に良かったぁ…」
「ん、ごめんね……」
司が安心したように、にこりと笑ってくれた。
生徒会室。
僕は前と同じように、生徒会としてここにいる。
「良かったね、悠も」
「………」
「……ていうか、あの、会長……?」
「……なに」
羽鳥先輩が苦笑して、司が戸惑ってる。
無理もないと思う。
僕は今、悠の脚の間に、座っている。
いつもは生徒会長席と僕の席は離れてるのに、悠はここに座らせたがる。
後ろから抱き締めるように腕を回して、書類を見ている。
……ええと。
「悠、ほら、僕邪魔だし」
「邪魔じゃない」
「座りにくいでしょ、」
「にくくない」
悠は今まで、あからさまに人前でベタベタしなかったから、みんな驚いてる。
僕も恥ずかしくて顔が熱いのがわかるけど、悠は離してくれない。
「………あ」
気にしない様子で悠がマグカップを持ち上げて、中に入ってないのに気付いた。
「おかわり!おかわり、注いできますっ」
「………」
「ぼ、僕も飲みたいしっ」
悠は渋い顔をしながら、ぱっと手を離してくれた。
僕はその隙にすとんと椅子から滑り落ちて、マグカップを持った。
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