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side.日向



泣きじゃくって息も絶え絶えな僕に、先輩は何度も口付けた。



「やだ、やっ……こわい……っ」



先輩を恐れる、現実と。
先輩を求める、記憶と。

怖くてもう関わりたくないと思っても、どうしてか、傍にいたいと思ってしまう。
自分の中の他の誰かが、先輩を求める。



「……俺、諦めたくない」
「先、輩……?」
「記憶がなくなっても、俺の事忘れても、嫌いになっても……っ好きだ」



ガタガタ震える僕を、先輩は抱き締めてくれた。
先輩も、震えてる。

……泣いてるの?



「泣かな、で……」
「っ、ひな」



どうしてそんなに、愛してくれるの?



「僕、先輩が知ってる人と、違うかもしれない……」
「………」
「それでも、っ………んっ」



優しく、優しく、キスされた。
先輩の愛しむような顔が、僕に向けられてる。
初めて見た、こんな表情。



「それでも、いい」
「っ………」



今なら、信じられそうな気がした。



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