6
side.日向
長い夢を、見ていた気がする。
楽しかった、中学時代。
いつも一緒にいた、泣きボクロの少年。
大好きだった。
純粋に、一緒に、いたいと思った。
離れ離れになった。
悲しくて、別れも言えないまま。
僕は少年を、忘れてしまった。
「……ごめん……」
誰の声?
わずかに少年と似た、けれどもっと、低い声。
「好きだ……」
愛しむような、優しい声。
頭を撫でる、温かい手。
あなたは、あの時と同じ―――。
「………ひな?」
「……あ……」
目を覚ますと、瀬川先輩の顔があった。
泣きそうな顔は、いつもと違うそれ。
なんの夢を、見ていたんだっけ―――?
「ごめん、楠本……俺、」
「せんぱい、」
夢の中の誰かが、叫ぶ。
誰かが、僕を動かす。
「え……?」
驚いたように、先輩の身体が固まった。
僕は咄嗟に身体を起こして、首に腕を回して抱きついていた。
「……て、……く、ださ……」
「なっ……」
誰かが、求める。
「シて、ください……」
「………!」
先輩の手が、ゆっくり、背中に回った。
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