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「過労ですね。あとは寝不足。あまりご飯も食べていないでしょう?」
「………」
「最近よく五十嵐くんに付き添われてきてたから、心配だったんですが……」
きっと俺が、日向を精神的に追い詰めた。
無意識に握った拳が、痛かった。
ゆっくり休ませるようにと忠告され、満月先生は行ってしまった。
「……ごめん……」
さっきよりは、大分顔色が良くなった。
ベッドの傍らに座って、柔らかい髪を梳くように撫でた。
俺が、執着しすぎた。
いつか思い出すかもという淡い期待を、無知な日向に押しつけた。
その結果が、これだ。
「ごめん……」
もう、終わりにしようと思った。
あの時の日向はもういなくなったんだと、割り切ろうと思った。
過去の日向を押しつけて、今の日向を追い詰めたくはなかった。
「っ……く、っ」
涙が出た。
謝罪と、後悔と。
ただ静かに眠る日向に、キスをした。
これが、最後。
「好きだ……」
抑えきれない想いは、どこに捨てればいいんだろう。
「……ずっと、好きだった」
さようなら、日向。
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