1
 

side.日向



僕は退院してから、色んなことを知った。

昔、瀬川先輩と恋人同然の関係にあったこと。
僕が転校して離ればなれになったこと。
事故にあって記憶をなくしたこと。

偶然出会ったこと。
思い出して、付き合い始めたこと。
そして僕は、また記憶を失ったこと。



「………」



同じベッド。
隣に眠る瀬川先輩をちらりと見た。

違和感に首に触れると、絆創膏が貼ってあった。
これは罪だと思った。



「……ごめん、なさい……」



僕は繰り返した。
先輩を裏切った。

どんなに頑張っても頭が痛むばかりで、記憶は戻らなかった。
けれど、先輩に辛そうな顔をさせてるのは、僕だ。
罪滅ぼしのつもりだった。
許されるなら、良かった。

先輩を受け入れて。
傷付けられても、受け入れて。
それで許されるなら、良かった。

だから僕は、先輩の部屋を出て行かなかった。



「………ひ、な…?」
「……先輩、」



もぞ、と先輩が僕の身体を引いた。
温かいぬくもりに抱き締められた。

先輩の顔は、見えない。
僕はただぼんやりと、空を見ているだけだった。



いっそ、殺してくれればいいのに。
そうしたら、許してくれる?



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -