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「……そりゃ、しんどい、けど。仕方ないだろ」
「………」



好きなやつの頭の中に、自分の記憶がないなんて。
思い出してくれればと、また「ゆう」と呼んでくれればと、何度願ったことか。
でも、過去の記憶はもう戻らない。



「ま、いいわ。あんま追い詰めんなよ」
「……お前もな」



裕二も、歪んだ関係にある相手が好きだ。
この男子校では珍しくもない、身体を売っている相手を想っている。
お互い、報われない。



「裕二、客なんだろ。よく金持ってんな」
「これでもギリギリだって」



口を尖らせた裕二が、なんだか哀しそうにみえた。

俺はちらりと日向を見た。
無防備な顔をして、眠っている。
昨晩の睡眠時間が少なく、体力も使い果たし、疲れているのだろう。

3年前と変わらない、いとおしいこ。



「記憶がなくても……今のお前が必要とされれば、いいんじゃないの?」
「……そうだな」



俺が日向を必要としているように、日向が俺を必要としてくれる日が、いつかくるのだろうか。

好きで、でも記憶は戻らなくて、もどかしくて、傷つけた。
忘れられる恐怖が染みついて、忘れられないように、日向に傷痕を残す。
色んな過程をすっ飛ばして、こんなことをして。

そんな日がくるなんて、どうにも想像できなかった。



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