3
side.日向
「ひ、……楠本……?」
「っ……」
瀬川先輩は、最初みたいに僕を「ひな」と呼んでくれなくなった。
そのたびに僕は、何故か悲しくなる。
「そんな、顔、しないで下さい……」
「……!」
「ごめん、なさっ……僕の、せい、ですよね……っ」
僕と居るたびに、先輩がつらそうな顔をするのがわかる。
それを見たるたびに、僕は、どうしていいかわからなくなる。
涙が出る。
僕のせいだ、と思う。
覚えていないけれど、遠くで誰かが、呼んでる気がする。
たまに沸き起こる、先輩への懐かしい想い。
忘れて、しまったのに。
僕は何も出来ないのに。
この感情は何だろう。
「僕の、僕のせいっ……ごめ、っ」
「泣くな、」
「ひぅっ……う、ぇっ……」
頭の中がいっぱいになる。
瀬川先輩は、怖い。
でも、優しい。
恐れて、怯えて、求めて。
色んな感情が入り交じって、どうしていいのか、わからない。
「僕のこと、忘れて、ください……っ」
「な、っ」
「ごめん、なさい……僕、もう、傷つけたくなっ……」
気付いたら、目の前に先輩の顔があった。
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