7
日向が、泣いた。
尋常ではない怯え様に、はっと我に返った。
「こわ、っ……なに、やだっ……」
記憶がないのは日向で。
何もかもわかってなくて。
突然俺という『恋人』の存在を知らされて。
戸惑わないわけ、ないのに。
「……ごめん、」
「やっ……」
「っ」
抱き締めようとしても、拒絶された。
不安と恐怖を刻ませたのは、俺だ。
「わかんなっ……も、やだ……っ」
「………」
「う、ぇっ……ふ、」
もう俺の傍で、安心したような顔は見せてくれないんだろうか。
「ぼくっ……わか、な……っ」
「わかった、わかったから」
「や、もう、やです、怖いっ……」
もう俺の腕の中で、眠ってくれないんだろうか。
「……ひな、」
手を伸ばして、触れられずに、下ろした。
震える身体を抱き締めることさえ、ままならない。
「……俺は、お前のこと……」
「っ……わか、なっ……」
「………」
あぁ。
また、すれ違った。
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