5
 

ベッドの傍らの椅子に座って、しばし沈黙。



「………ひな、」
「はっ、はい!」
「……怖がんな」
「ご、ごめ、なさ……」



目をあわせてくれない。
布団を握りしめた手が、少しだけ震えていた。

頭には痛々しい、ガーゼと包帯。
痛かっただろうな、と。
自分があのときしっかり手を握ってやれば、と後悔した。



「あの、っ」
「……ん」
「司に、聞いてっ……僕と、っ瀬川、先輩が……付き合ってたって……」
「………」



本当に、覚えてないらしい。

無意識に、白い頬に手が伸びた。



「っ……!」
「!」
「あ……」



ぱしん、と手を叩かれた。
俺を見る日向の顔は、恐怖で歪んでいる。

同じだった。
記憶が戻る前と。
無理矢理俺が抱いていた、あの時と。



頭がかっとなった。



「なっ……んぅっ」



頭を押さえて動きを封じて、荒くキスをした。

それに応えるわけもなく、必死に俺の身体を離そうとする。
イライラした。



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