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一歩足が進めると、日向がびくりとした。
……なんだ、その表情。



「悠っ」



裕二から腕をひかれて動きを制止された。



「こっちこい」



病室の外に連れていかれ、廊下に二人になった。



「なん、なんだよ……」
「落ち着けって」
「落ち着けるわけねぇだろっ!」



がん、と壁を殴った。



―――俺のことを、忘れてる?



「親父に伝えるから。精密検査してもらうし」
「………」
「苛立つのもわかるけど、日向は病み上がりだし……な、まずはお前が落ち着け」



落ち着いてられるはず、なかった。



「同じじゃねぇかっ……」
「落ち着けって!まだわかんねぇだろ!」



声を荒げて、裕二が壁に肩を押しつけてきた。
背中に感じた鈍痛に、頭が冷えていく。



「……喧嘩、したんだ」
「え……?」
「喧嘩したままっ……」



なんであんなことしたんだと、後悔しても、もう遅い。
握った拳は、痛かった。



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