3
一歩足が進めると、日向がびくりとした。
……なんだ、その表情。
「悠っ」
裕二から腕をひかれて動きを制止された。
「こっちこい」
病室の外に連れていかれ、廊下に二人になった。
「なん、なんだよ……」
「落ち着けって」
「落ち着けるわけねぇだろっ!」
がん、と壁を殴った。
―――俺のことを、忘れてる?
「親父に伝えるから。精密検査してもらうし」
「………」
「苛立つのもわかるけど、日向は病み上がりだし……な、まずはお前が落ち着け」
落ち着いてられるはず、なかった。
「同じじゃねぇかっ……」
「落ち着けって!まだわかんねぇだろ!」
声を荒げて、裕二が壁に肩を押しつけてきた。
背中に感じた鈍痛に、頭が冷えていく。
「……喧嘩、したんだ」
「え……?」
「喧嘩したままっ……」
なんであんなことしたんだと、後悔しても、もう遅い。
握った拳は、痛かった。
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