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「俺と別れたいの」
「ちがっ……」
「じゃ、なに?五十嵐はただの友達ですってか?」
日向が泣き出して、虐めてるような気になってくる。
それでも、俺の腹の虫は収まりそうになくて。
「俺の目の前で仲良さそうにしやがって、」
「司、はっ……」
「お前、誰のものかわかってんの?」
顔をぐっと近付けると、どんっと身体を押された。
不意討ちのそれで、ぐらりと身体が揺らいだ。
「おま、」
「違う……っ別れたいのは、悠の方じゃんっ……」
「はぁ?」
「違うって言ってる、のに、話聞いてくれないしっ……仲良いのは、そっちっ……」
泣きじゃくっていて、うまく声が拾えない。
けれど、日向の目は明らかな意思を持って、俺を見つめる。
「羽鳥先輩、と……ずっと、一緒いる、しっ」
「え」
「生徒会は、仕事……仕方ない、けどっ、さぼり、一緒にっ……」
文章になっていないけど、言いたいことはわかる。
俺と裕二ができてると思ってる?
昼休みの視線は、仕事の心配じゃなかったらしい。
どこをどう疑ったら、そういう風に見えるんだ。
俺と裕二はただの友達で、
(……あ、)
もしかしたら日向と五十嵐も、俺たちと同じ……?
恋人が他のやつといるってだけで、変に考えてしまった、のか。
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