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「悠、悠!」
「……あ?」



授業中とは言うものの、自習になっている時間。
後ろの席の裕二が背中を叩いてきた。



「なに」
「外、日向いるよ」
「………」



そういや、体育とか言ってたっけ。

窓際のこの席からは、グラウンドがよく見える。
サッカーらしく、わあわあと数人でボールを追っている。
そこから少し離れて、今は休憩なのか、日向が観戦していた。
隣には五十嵐がいて、時折なにか話しては―――無邪気に笑いあっている。



「……どこ行くの」



がたりと立ち上がると、裕二がきょとんとした声をあげた。



「………」
「ちょ、待てよ、さっきからお前おかしいだろ」



自習なんて、さぼるやつは少なくはない。
今も空席が多い教室を、俺は出ていった。
後ろからついてくる裕二の問いかけに答える気も、振り払う気もなかった。

行くあてもなく、中庭へと続く人気のない廊下にきて、



「おいっ」
「っ………」



裕二に後ろから腕をひかれ、思わず立ち止まった。



「どうしたんだよ、言わないとわかんないだろ」
「………」



言いたくない。



「ゆ……かい、ちょう……?」
「あ!偶然!」



突然だった。
偶然というには、あまりに良すぎるタイミング。
日向と五十嵐の声が背中に聞こえた。



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